自分のためだけに作ったモノは、多数派にとってのいいモノじゃないかもしれないけれど、一方でそれをすごく欲しいと思う人も少なからずいる。それに気づいた瞬間に、新しいガレージメーカーが生まれるのかもしれません。OGAWAND の OWN を紹介します。
ひとつのパックでいろんなアクティビティに対応したい
OGAWANDは小川隆行さんのギアブランド。そしてOWNはもともと、彼自身のために生まれたバックパックでした。
ひとつのバックパックでいろんなアクティビティに対応したい。それは彼自身がひとつのことをひたすら極めるのではなく、いろんなアクティビティを楽しむタイプの人だったから。ハイキングが好きだけど、クライミングも好き。源流域でのフライフィッシングも好き。自転車も。それぞれ専用のギアを持つ必要はあるけど、本当にベースとなる道具は少なくシンプルでいいはずだ、と彼は考えたのです。

グリーンは2013年11月に追加された新色。
米国のウルトラライトのギアは、その背景としてスルーハイクというアクティビティとカルチャーがあり、軽さを重視しましたが、日本ではちょっと事情が異なります。ときには何日もかけてテント泊の縦走をすることもありますが、ふだんは週末に日帰り登山や一泊というケースが多いでしょう。また、バリエーションルートの山道は狭くて急で藪がちだし、沢登りのような日本ならではのアクティビティもあります。
そこで小川さんは、
・容量が必要に応じて増減できる
・いろんなアクティビティのために、自由にカスタマイズできる
・シンプルで丈夫である
というバックパックを設計したのです。
あなたが便利だと思うことは、他の誰かにとっても役に立つ
実際、このバックパックの原型は小川さん自身がMYOGしたものでした。MYOGとは「Make Your Own Gear」の略で、ギアを自作する行為やそのギアのこと。小川さんはあくまでも自分のために、自分が欲しいパックを自分で作ったので、他の人がそれを欲しいと思うとはまったく考えていなかったそうです。ところが、その自作バックパックをガレージメーカー 山と道 の夏目彰さんに見せると、こんなことを言われるのです。
「いや、あなたが便利だと思うことは、きっと他の誰かにとっても役に立つんだよ」
この夏目さんの発言が「他の誰か」を意識するきっかけきっかけになって、OWNはMYOGから製品へと歩き始めたのです。
2012年3月に三鷹のハイカーズデポで行われたイベント「MYOGの世界」で発表され、そこでは多くの人から好評を得たそうです。その後さらに約1年半の改良を経て、製品としての発売に至っています。
容量は可変。用途は自由。
そんなOWNの最大の特徴はADC(Adjustable Daisy Chain)とOGAWANDが呼ぶ仕組み。ADCはバックパックを縦にぐるりと通っている2本のループと専用のフックによって構成されているのですが、これらを使うことで、次のようなOWN独自の機能を実現しているのです。
まず、パックの容量を自由に変化させることができます。そのスパンは25Lから50L。これならデイハイクから長期縦走まで使えるでしょう。

容量を最少の25L程度にした状態。デイパックやアタックザックとして使える。
単にフクロの長さを伸縮させてるだけかと思いきや、そうではありませんでした。ADCでパーツの位置を変えることで肩・腰・胸の3点で荷重バランスを最適化でき、どんな容量で使うときも快適に背負えるように考えられています。ショルダーハーネスの付く位置・長さ・角度を変えられるうえ、ショルダースタビライザーとパック本体との接点・長さも変えられます。

背面。ショルダーハーネス(下部)もスタビライザーもADCのループに接続されていて、自由に調整可能。すべて取り外してしまうこともできる。
OWNはウェストベルトのないパックなので、大容量にして詰め込むと、どんどん肩への負荷も大きくなるかと思っていましたが、ショルダースタビライザーで重心の前後位置をコントロールすると、ちゃんと3点に分散されるのだそうです。少し担がせてもらったのですが、このショルダー周りの調整で確かにかなり感覚が変わることがわかりました。
背面長がワンサイズなのもこうした可変性があるからで、小柄な女性から背の高い男性まで対応しているそうです。
また、カスタマイズ性の高さもADCによって実現しています。スリーピングマットなどをくくりつけるアジャスター付のベルトや、トレポなどを装着できるギアループ、フロントに付ける大きなメッシュポケット(予定)といったオプションが用意されています。スノーシューを入れるポケットや、トレランベストのようにボトルホルダーやポケットの付いたハーネスも構想には上がっているそうです。面白いです。
ユーザー各自のMYOGのベースとしても、すごく弄り甲斐がありそうに思います。
ショルダーハーネスが簡単に外せるのと、ADCのループが背面にも通っているので、たとえば自転車のキャリアに固定したり、パニアバッグとして使ったりもできそうです。この用途なら、内部のパッドスリーブに合成樹脂のプレートを入れてやると具合がよさそうです。
家具や文房具のようにシンプルで丈夫なギア
OGAWANDが作るギアは「家具や文房具のようにシンプルで丈夫なもの」を目指しているそうです。買ってしまったらもうそれ以上手の施しようのない製品ではない。手に入れた後でも、ユーザーが好きなようにカスタマイズして、長い間使って欲しい。だからこそ、ほとんどのパーツが取り外し可能で、修理もしやすいようにしているとのこと。
「OWNはユーザーが完成させるものだと思っているんです」。
そう小川さんは言っていました。
- 製品名
- OWN
- メーカー
- OGAWAND
- 容量
- 25~50L
- 重量
- 530g
- 価格
- 31,500円
- 購入
- OGAWANDオンラインストア